「ふくらし粉」と「重曹」は、どちらもお菓子をふくらませる白い粉です。レシピに「ふくらし粉」とあると、どちらを使えばよいのか迷いますよね。
ふくらし粉は生地をふくらませる材料の総称で、食品表示ではベーキングパウダーと同じ意味の呼び名です。重曹はその材料の一つで、炭酸水素ナトリウムという1つの物質です。
市販のベーキングパウダーにはこの重曹が入っていて、酸性の成分などを混ぜて使いやすくしてあります。2つの違いをひと言でいうと「配合済みの完成品か、材料の一つか」です。この差が、ふくらみ方や焼き色、味の違いにつながります。
ふくらし粉と重曹の違いは「総称」と「材料の一つ」
2つは別々の商品として売られていますが、同じ並びで比べるものではありません。まずは言葉の違いを整理します。
ふくらし粉はベーキングパウダーと同じ意味の呼び名
消費者庁の食品表示のルールでは、パンや菓子の生地にガスを発生させてふくらませる添加物を「膨脹剤」としてまとめています。表示に使える名前は「膨脹剤」「膨張剤」「ベーキングパウダー」「ふくらし粉」の4つです。原材料表示の書き方に違いはあっても、どれも同じ種類の添加物を指しています。
東京都保健医療局の解説でも、膨脹剤はふくらし粉やベーキングパウダーとも呼ばれ、炭酸ガスなどを出して蒸し菓子や焼き菓子をふっくらさせるものと説明されています。商品名ではなく、生地をふくらませる粉をまとめて呼ぶ名前だと覚えておくと混乱しません。
出典:消費者庁「食品表示基準について」別添 添加物1-4 各一括名の定義及びその添加物の範囲
出典:東京都保健医療局「膨脹剤」
重曹は炭酸水素ナトリウムという1つの物質
重曹は「炭酸水素ナトリウム」の別名です。昔から家庭でも使われてきた膨脹剤で、単独で使うほか、酸性の成分と組み合わせても使われます。お菓子では、焼き菓子やホットケーキ、まんじゅうなどに使われています。
加熱すると分解して、二酸化炭素と水、炭酸ナトリウムという別の物質に変わります。このとき出る二酸化炭素の泡が生地の中で広がり、お菓子がふくらみます。
出典:東京都保健医療局「膨脹剤」
出典:横浜市立南戸塚中学校「炭酸水素ナトリウムの熱分解②」
ベーキングパウダーの中にも重曹が入っている
ベーキングパウダーは、重曹に酸性の成分などを混ぜた製品です。たとえば「アイコク ベーキングパウダー」の原材料表示では、炭酸水素ナトリウムが25.0%、グルコノデルタラクトンや酸性ピロリン酸ナトリウムなどの酸性の成分が合わせて49.0%、コーンスターチが25.0%となっています。
つまり、ベーキングパウダーは重曹を含む「配合済みの膨脹剤」です。配合の割合は製品ごとに違いがあるため、手元にある商品の原材料表示も確認してみてください。
出典:プロフーズ オンラインストア「アイコク ベーキングパウダー 100g」商品情報(原材料名)
ふくらし粉と重曹の違いを比較表で確認
市販のベーキングパウダーと重曹を、お菓子作りで気になる点で並べると次のようになります。違いが出やすいのは、焼き色と味です。
| 比べる点 | ベーキングパウダー | 重曹 |
|---|---|---|
| 中身 | 炭酸水素ナトリウム+酸性の成分+コーンスターチなど | 炭酸水素ナトリウムだけ |
| ふくらむきっかけ | 水分と熱で、中の成分どうしが反応する | 主に加熱。酸性の材料があれば混ぜた時点でも反応する |
| 焼き色 | 変わりにくい | 黄色〜茶色っぽくなりやすい |
| 味 | くせが出にくい | 量が多いと苦みが出やすい |
| よく使うお菓子 | ホットケーキ、ビスケット、ドーナツなど | まんじゅう、焼き菓子、ホットケーキなど |
| 扱いやすさ | 酸がセットなので単体で使いやすい | 分量と組み合わせる材料に注意が必要 |
表の中でいちばん大きな違いは、酸性の成分が最初から入っているかどうかです。重曹だけを使うと、加熱後の生地に炭酸ナトリウムが残ります。炭酸ナトリウムは水に溶けると強いアルカリ性を示す物質で、中華めんのかん水にも使われています。
製粉振興会によると、小麦粉に少し含まれるフラボノイド系の色素はアルカリで黄色くなります。重曹で作った生地が黄色っぽく仕上がりやすいのは、このアルカリが残るためです。アルカリが強く残ると、独特のえぐみや苦みを感じる原因にもなります。
ベーキングパウダーは中の成分どうしが反応し合うので、アルカリが生地に残りにくくなります。白くふんわり仕上げたい生地にはベーキングパウダー、焼き色や風味を生かしたいまんじゅうなどには重曹、という使い分けの違いはここから生まれます。
ぷよん重曹で作った蒸しパンが黄色っぽくなるのは、性質による色の違いだよ。白く仕上げたいときは、次はベーキングパウダーで作ってみてね!
「膨張剤」という言葉そのものの整理は、膨張剤とベーキングパウダーの違いを初心者向けに図解で詳しく紹介しています。
出典:横浜市立南戸塚中学校「炭酸水素ナトリウムの熱分解②」
出典:一般財団法人 製粉振興会「小麦粉の加工と製品」
レシピの「ふくらし粉」は重曹とベーキングパウダーのどちら?
レシピに「ふくらし粉」とだけ書かれていたら、基本はベーキングパウダーを使えば大丈夫です。食品表示のルールでも同じ意味の名前として扱われていますし、酸性の成分がセットになっているので、ほかの材料に左右されずにふくらみます。
ただし、この言葉は膨脹剤全体を指す名前でもあるため、作った人が重曹のつもりで書いている場合もあります。次の点に当てはまるかどうかで、どちらを想定したレシピか判断しやすくなります。
- 材料や作り方のどこかに「重曹」「炭酸」「タンサン」と書かれている
- 完成写真の生地が黄色〜茶色っぽい
- ヨーグルトやレモン汁など、酸味のある材料が入っている
3つ目の酸味のある材料は、重曹の反応相手になります。それだけでは酸が足りないため、レシピの中で酸を補っていると考えられます。どれにも当てはまらなければ、ベーキングパウダーで作るのが無難です。
反対に、重曹と書かれたレシピをベーキングパウダーで作ると、焼き色が薄くなったり、量によってはふくらみ方に違いが出たりします。仕上がりが写真と違いすぎるときも、2つの違いを知っていれば原因を考えやすくなります。
代用するときの分量の違いと考え方
家にどちらか一方しかないときは、配合の違いを踏まえて量を調整します。ここでは先ほどのアイコクのベーキングパウダー(炭酸水素ナトリウム25.0%)を例に計算します。製品によって配合は異なるので、考え方の目安として使ってください。
ベーキングパウダーの代わりに重曹を使う場合
このベーキングパウダー4gに含まれる炭酸水素ナトリウムは、4g×25%で約1gです。同じ量をそのまま入れると、ガスのもとは約4倍になり、加熱後に残るアルカリも増えてしまいます。
代用するなら、ベーキングパウダーの重さの4分の1程度から試すのが計算上の目安です。ただし酸性の成分は入らないため、焼き色や風味の違いは残ります。生地に酸味のある材料が入るレシピなら、反応相手があるので代用しやすくなります。
重曹の代わりにベーキングパウダーを使う場合
反対に、重曹1g分をこのベーキングパウダーでとろうとすると、計算上は約4g必要です。そのぶん酸性の成分やコーンスターチも一緒に入るため、焼き色は薄く、風味もあっさりした仕上がりに変わります。色や香ばしさを生かすお菓子では、見た目の違いが出やすい点を覚えておきましょう。



代用するときは、いきなり全部の生地で作らずに、少量で試し焼きしてから本番にすると安心だよ。
量るときはスプーンよりスケールが確実
計量スプーン1杯の重さは、粉の詰まり具合やすり切り方で変わります。代用で量を変えるときは、キッチンスケールで重さを量ると失敗が減ります。使用量の目安は製品ごとに違いがあり、パッケージに書かれています。アイコクのベーキングパウダーなら「小麦粉300gに対し本品10g」が目安です。
出典:プロフーズ オンラインストア「アイコク ベーキングパウダー 100g」商品情報(原材料名・使用量の目安)
パン作りで使うときのイーストとの違い
パン作りでは、ベーキングパウダーなどのほかにイーストも使います。イーストは酵母で、生地の中で発酵しながら時間をかけてガスを出します。一方、ベーキングパウダーと重曹は化学反応でガスを出すため、発酵を待たずにすぐ焼けるのが大きな違いです。
製粉振興会は、蒸しパンを膨張剤(重曹やベーキングパウダー)でふくらませた一種のパンとして紹介しています。イーストを使わずに手軽にパンを作りたいときは、ベーキングパウダーを使った蒸しパンが選択肢になります。
イーストとの使い分けはパンにベーキングパウダーとイーストどちらを使う?、イーストなしで焼く方法は薄力粉でパンは作れる?で詳しく解説しています。
使う前に確認したいこと
2つの違いがわかったら、買うときや使うときに見ておきたい点も押さえておきましょう。
アルミニウム入りかどうかは原材料表示で見分ける
ベーキングパウダーの中には、酸性の成分として「ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)」を使ったものがあります。東京都保健医療局によると、ミョウバンは炭酸水素ナトリウムとの反応がゆるやかでガスが長く出続ける一方、渋みがあるのが特徴です。同じベーキングパウダーでも、酸性の成分の種類は商品によって違います。
消費者庁は、食品安全委員会がアルミニウムの耐容週間摂取量を体重1kgあたり2.1mgと設定したことや、2018年から菓子・生菓子・パンに使用量の基準(1kgあたりアルミニウムとして0.1g以下)が設けられたことを紹介しています。令和2〜3年度の調査では、加工食品からの推定摂取量は大きく減ったとされています。
気になる場合は、原材料表示に「ミョウバン」「硫酸アルミニウムカリウム」などがない商品や、「アルミニウム不使用」と書かれた商品を選びましょう。食品用の重曹は炭酸水素ナトリウムだけなので、アルミニウムは含まれていません。
出典:東京都保健医療局「膨脹剤」
出典:消費者庁「アルミニウムに関する情報」
重曹は「食品添加物」と表示されたものを使う
重曹は掃除用としても売られています。お菓子やパンに使うときは、パッケージに「食品添加物」や「食用」と書かれたものを選びます。食品に使うものは、国が定める食品添加物の規格(食品添加物公定書)に沿って作られています。掃除用として売られているものは、食べることを前提にした商品ではないので、料理には使わないようにしましょう。用途の違いは、パッケージの表示で確かめられます。
ベーキングパウダーは湿気を避けて保存する
ベーキングパウダーは、水分に触れると中の成分どうしが反応を始めます。湿気を吸うと使う前に反応が進んでしまうため、使ったあとはふたや袋の口をしっかり閉め、高温多湿を避けて保管しましょう。
出典:プロフーズ オンラインストア「アイコク ベーキングパウダー 100g」商品情報(保存方法)
ふくらし粉と重曹の違いでよくある質問
ふくらし粉と重曹は同じものですか?
同じではありません。重曹は膨脹剤の材料の一つで、市販のベーキングパウダーはそこに酸性の成分などを混ぜたものです。いちばんの違いは、酸性の成分が入っているかどうかです。
ベーキングパウダーとふくらし粉に違いはありますか?
食品表示のルールでは同じ種類の添加物をまとめた名前として扱われていて、呼び方の違いと考えて問題ありません。レシピにこの名前があれば、ベーキングパウダーを使えば大丈夫です。
重曹で作ったお菓子が苦いのはなぜですか?
加熱後に残る炭酸ナトリウムのアルカリが原因と考えられます。量が多すぎないかを確認し、気になる場合はベーキングパウダーで作ってみてください。
掃除用の重曹をお菓子作りに使ってもいいですか?
使わないでください。お菓子やパンには、「食品添加物」や「食用」と表示されたものを使います。
まとめ|ふくらし粉と重曹の違いを知って使い分けよう
ふくらし粉は膨脹剤の総称で、ベーキングパウダーと同じ意味の呼び名です。重曹はその中に含まれる材料の一つで、酸性の成分が入っていない点が大きな違いです。
- レシピの「ふくらし粉」は、基本的にベーキングパウダーを使う
- 重曹は焼き色や風味を生かすお菓子向きで、量が多いと苦みが出やすい
- 代用するときは原材料表示で配合の違いを確かめ、スケールで量る
- アルミニウムが気になるときは原材料表示を確認し、重曹は食品用を選ぶ
次にパンやお菓子を作るときは、手元の袋の原材料表示を一度見てみてください。炭酸水素ナトリウムがどれくらい入っているかがわかると、レシピとの相性や代用の量も判断しやすくなります。










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